おむつかぶれに代表される原因を、京都大学医学研究科のグループがマウス実験で解明したそうです。
2020/12/24
おむつかぶれに代表される刺激物などが皮膚に炎症をおこす刺激性皮膚炎の仕組みの一端を、京都大学医学研究科のグループがマウス実験で解明したそうです。赤ちゃんも悩むおむつかぶれに、ステロイドを使わない新薬が期待されます。
刺激性皮膚炎とは、皮膚に何らかの刺激が加わることで炎症を誘発する症状です。おむつかぶれの場合、詳しくは接触性皮膚炎(せっしょくせいひふえん)に分類される一次刺激性接触皮膚炎(いちじしげきせいせっしょくひふえん)があります。
一次刺激性接触皮膚炎は、アレルギーに関係なく、接触するものの毒性の強さによって症状がかわります。痒みを伴う湿疹が広がる特徴があります。
赤ちゃんに身近な皮膚炎といえば、おむつかぶれです。おむつかぶれは悪化すると、見るだけでも痛々しいのでママはできる限り、おむつかぶれにならないように気をつけます。
おむつかぶれの主な症状は、おむつや便、尿があたっている部分におこる皮膚の炎症です。赤い湿疹がポツポツとでき始め、やがて肛門周辺など、普段おむつで覆われているところが赤くなります。
この時に、便や尿が付着する時間が長かったり、汗をかいたままでおむつの中が蒸れていると、赤くなった部分がジュクジュクしてしまったりヒリヒリ痛みを強めて、もっと完治が遠のいてしまいます。
おむつかぶれは症状によって使用する軟膏の成分が変わります。これといった確実な特効薬がないのです。
ある赤ちゃんが白色ワセリンで軽度で済んだとしても、他の赤ちゃんも白色ワセリンだけで完治するとは限りません。おむつと皮膚環境で、ステロイドを処方されることもあります。
今回、京大の研究チームが解明したのは、おむつかぶれの原因にアレルギー性疾患および寄生虫疾患に関与していると言われていた末梢血中(まっしょうけっちゅう)にわずかに存在する白血球の「好酸球(こうさんきゅう)」と「好塩基球(こうえんききゅう)」が関与していることです。
研究チームは、遺伝子操作したマウスに、皮膚炎症を起こす薬剤を塗布、そのうえで3通りの実験をしました。
ここでは、わかりやすく1~3の番号をつけて説明します。1つは好酸球が多い、2つめは好酸球がない、3つめは好塩基球がないという設定です。
すると、2つめの好酸球がないマウスは炎症が少なかったそうです。逆に好酸球が多い1つめのマウスは炎症がひどかったそうです。
そして好塩基球のない3つめのマウスは、皮膚の炎症部分に好酸球が集まりにくかったそうです。
この実験から、炎症をおこすには好塩基球が好酸球をひきこむことが判明しました。
つまり、おむつかぶれは好酸球と好塩基球の働きを操作することで、炎症をおこしていると確認できたわけです。
そもそも、好塩基球はヒアルロン酸やヒスタミンが含まれていて、アレルギー反応を起こすときはヒスタミンが放出されています。
ということは、好塩基球がどんな働きをするのか操作できれば、アレルギー症状もコントロールできるかもしれません。このように、おむつかぶれのメカニズムがわかったということは、単に関与している成分が確認されただけではありません。
今後の、おむつかぶれ症状を緩和させたり予防させるような新しい治療法を考える、きっかけができたのです。おむつかぶれに限らず、デリケートな皮膚トラブルが改善されることを願います。
特に赤ちゃんや皮膚がデリケートな人には重要問題だったステロイド薬を使わない、新しい皮膚の治療薬が期待されています。