へその緒

へその緒とは、臍帯(さいたい)と呼ばれる胎児と母体の胎盤を繋ぐ白い管状組織です。出産前は、へその緒が胎内の赤ちゃんに酸素と栄養を送る大切なライフラインで、大人で言う気道や食道の役割を果たします。

胎児への重要性から、現在は外部からの供給ラインや命綱を「へその緒」と表現することがあります。

へその緒の中身

へその緒は動脈2本、静脈が1本通っています。一体化するようにらせん状になっていて、ワルトンゼリーとゆう寒天状のぬるぬるした物質で覆われています。

ワルトンゼリーは、それぞれの脈が絡まって血流が止まらないように、それぞれを保護しています。ねじれているのは強度を増す為で、直線状で存在するよりも傷つきにくいとされています。ねじれる理由は、それぞれの脈の発育に時間差があり長短があるからだと言われています。なぜか左方向にねじれることが多く見られます。

赤ちゃんでいっぱいの羊水の中にあって手や足で蹴られていても、ワルトンゼリーが表面を滑らかにコートしているので、通常、ちぎれたり破損することはありません。

臍帯静脈

静脈は臍帯静脈(さいたいじょうみゃく)と呼ばれ、臍帯の中では臍帯動脈(さいたいどうみゃく)とねじりあって存在します。

臍帯静脈は、胎盤で栄養と酸素をたっぷり含んだ血液を、胎盤から赤ちゃんへと運びます。これが胎内の赤ちゃんの生命力となるのです。この時に運ばれる血液は純粋な栄養分で真っ赤な色をしています。

臍帯動脈

臍帯動脈は、臍動脈(さいどうみゃく)とも呼ばれ、臍静脈とは反対に胎児から胎盤へ血液を運ぶ役割。臍静脈で運ばれた新鮮な血液を得た赤ちゃんの老廃物を含んでいます。

臍帯動脈は、血液を胎盤から運ぶ臍帯静脈と違って、胎児に与えた後の血液を胎盤に戻します。そのため、血液中の酸素も低く栄養分のない老廃物が占めています。

一般的に動脈は心臓から血液を送り出す役割とされていますが、この臍帯動脈だけは老廃物を胎児から運び出す役割です。

へその緒の長さ

最終的には直径1~1.5センチ、長さは約50センチにもなります。それだけ長い為に、赤ちゃんが羊水内で動く時に自然とゆるく絡みつく場合もあります。たいていはワルトンゼリー等の働きによって外れますが、首に巻きついてしまう時は経過を観察します。

この時、巻きつき方にもよりますが、首を圧迫して赤ちゃんが低酸素状態になる場合もあります。しかし、へその緒が巻きつくのは90%は首だとされています。

へその緒の切断

へその緒は、分娩時に赤ちゃんとともに出てきますが、その場で切って離されます。今までは出産を担当した医師や助産婦が担当していましたが、最近は立会出産時に父親が切断することを許可する産院もあります。

切断後は消毒がきちんと施され、感染症を防ぎます。切断したへその緒は邪魔にならないよう縛られて、赤ちゃんのへそにくっついていますが次第に乾燥して渦を巻くように小さくなって脱落します。

へその緒の切断時に赤ちゃんがチアノーゼを起こして泣いていても、これは自ら酸素を取り込むための呼吸をする為なので問題はありません。

へその緒の保管

日本ではへその緒を大切な出生記念として保管する習わしがあります。昔からお守りとして扱われ、本人が危篤になった時に飲ませると回復するなどの言い伝えもあります。正式には命名書と一緒に神棚や仏壇に供えます。とはいえ、肌身離さず持っている人は少ないようです。

生後1週間くらいで脱落してきますが、注意していないとおむつにくっついて捨ててしまう恐れもあります。これを防ぐために、産院側が分娩時に保管用をとっておき、出産祝いとして乾燥してくれることもあります。

現在の日本では、へその緒専用の保存ケースも様々なデザインがあり、防虫やカビを防いで保存することが主流となっています。多くは防虫防かびに優れた桐や白樺が使われた木箱です。保存する頃には、小さな子どもに見せても、これが自分のおせそについていたとは信じてくれないほど乾燥して硬くなってしまいます。

臍帯血

臍帯血(さいたいけつ)とは、へその緒の中の血液です。臍帯血の中には幹細胞と言って、私たちの体を生成する組織や臓器になりうる貴重な細胞なのです。つまり、体内の組織や臓器を正常でない場合、この幹細胞を使って再生医療ができるということです。

そのため、将来に備えて保険感覚で自分の臍帯血を企業に委託し、保存することも注目されています。自分の臍帯血ならば100%一致するからドナーを探さずに済むし、もしも不要なら臍帯血が必要な患者に提供できるという考えです。

臍帯血は、出産後に医師がへその緒から採血します。5分程度で済むと言われていて、この作業で母子が痛みを伴うことはありません。臍帯血が採取できるのは出産時のみです。

特に、血液細胞が異常になって正常な血液が作れなくなる白血病や悪性リンパ腫になると、造血幹細胞移植(ぞうけつかんさいぼういしょく)で正常な幹細胞を移植して治療することが最善の治療策の1つとされています。しかし、その為には白血球が一致しないと移植できないので、ドナーを探すことは大変なことで問題とされています。