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人食いバクテリアをわかりやすくママに説明

人食いバクテリアと呼ばれる感染症の患者数が、過去最高に達しています。

赤ちゃんを抱っこするママ

2020/12/24

人食いバクテリアと呼ばれる感染症の患者数が、過去最高に達しています。特に今年は夏までの感染者数はウナギのぼり。なかでも劇症溶連菌感染症と別名をもつ、溶連菌が由来の症状は子育て家庭でも気をつけてほしい感染症の1つです。

人食いバクテリアとは

人食いバクテリアとは、劇症溶連菌感染症(げきしょうようれんきんかんせんしょう)やビブリオ・バルニフィカスとよばれる感染症の一種です。呼び名の違いは、原因となる菌によります。

乳幼児が感染しやすい溶連菌(ようれんきん)で知られる連鎖球菌(れんさきゅうきん)に属する菌が原因でひきおこされる症状は、劇症溶連菌感染症と考えられます。

ビブリオ属に属する細菌が原因の場合は、ビブリオ・バルニフィカスと考えられます。ちょっと難しい単語ですが、ビブリオ属にはコレラ菌や、食中毒をひきおこす腸炎ビブリオも含まれていて、実は私たちの身近に存在している菌です。

もっと詳しく説明すると、劇症溶連菌感染症もビブリオ・バルニフィカスも原因となりうる菌は、真正細菌(しんせいさいきん)と呼ばれるものです。これは別表記にすると「Bacteria」、つまりバクテリアです。

人食いバクテリアと聞くと、ちょっと恐ろしいイメージがありますが菌のことなのです。

人食いバクテリアの由縁

人食いバクテリアの代表的な症状として、皮膚の内部組織が壊滅して黒ずむことは、壊死性軟部組織感染症(えしせいなんぶそしきかんせんしょう)と判断されることもあります。詳しくは、その人の症状や細菌検査によって医師が判断します。

内部組織が壊死してしまうと、その部分は黒ずんでまるでバクテリアに食べられて無くなってしまったように連想できることから、「人食いバクテリア」と呼ばれるようになりました。

溶連菌と人食いバクテリア

人食いバクテリアと呼ばれる感染症のなかでも、溶連菌(ようれんきん)が関わる症状が劇症溶連菌感染症です。(参考1)

溶連菌と関連している聞くと育児中のママも心配になります。溶連菌といえば、乳幼児が発症しやすい病気の1つだからです。

そもそも溶連菌感染症といえば、化膿連鎖球菌(かのうれんさきゅうきん)が引き起こすことが多いのですが、実は化膿連鎖球菌は健康でも喉や表皮に生息する細菌でもあります。

でも、これらの溶連菌に対して体が免疫反応をひきおこしたり、菌から毒素が発生すると溶連菌感染症の原因となってしまいます。

それだけでは溶連菌感染症として発熱やのどが痛くなる症状が目立ちます。ところが溶連菌の毒素によって壊死性菌膜炎(えしせいきんまくえん)という症状があらわれると、急スピードで指先や足先から体内の組織が壊死しはじめます。この症状が、溶連菌感染症と呼ばれる症状のなかでも最も重症だと考えてください。そして、これが溶連菌感染症を由来とする人食いバクテリア感染症です。

溶連菌がきっかけで人食いバクテリア感染症がひきおこされると、高熱や局所の腫れ、体全体の倦怠感や下痢など不調が続きます。その間にも、体の中では指先などの末端から壊死が進み、生命の危険も心配されることがあります。

特に皮膚疾患があるときに感染に気をつけるべきだと考えられます。壊死した部分の皮膚は黒ずみ、その期間は1~3日で進行するケースも見られます。

溶連菌と聞くと、乳幼児の感染症で親は看病するものだと連想しますが、溶連菌の感染には大人も子どもも関係なく注意が必要だと考えてください。

ビブリオ・バルニフィカス感染症と人食いバクテリア

聞き慣れない言葉ですが「ビブリオ・バルニフィカス」または「ビブリオ・ブルニフィカス」と呼ばれる菌が原因となって人食いバクテリアの症状があらわれるときは、生の魚介類が原因となります。(参考2)

ビブリオ・バルニフィカス感染症になると、溶連菌が原因のケースと同じように皮膚組織の壊死が猛スピードで進みます。

夏は海水温度もあたたかく菌が増殖しやすい環境になるので、気温の高い時期の生の魚介類には食中毒の注意が必要です。適切な処理と調理をほどこしている生の魚介類にかんしては栄養面も高く、生食が総じて危険なわけではありません。

人食いバクテリアと予防ワクチン

人食いバクテリアと呼ばれる感染症に、決定的な予防ワクチンはありません。だからこそ、感染症に対して家族で気をつけるように心がけましょう。

例えば、もともと劇症溶連菌感染症のきっかけをつくる溶連菌も、生活に密着した菌です。あるとき突然あらわれて増殖するというよりは、弱いところに反応してくると考えてください。つまり健康を意識することが、溶連菌にたいする予防に繋がります。

こんな人は気をつけて

人食いバクテリアに特に気をつけてほしいのは、免疫力が低下しているときです。例えば、もともと溶連菌は乳幼児が溶連菌感染症にかかっても完治するような細菌です。いつも強力な攻撃力を出しているわけではありません。でも体力が低下しているときは要注意です。

他にも、糖尿病や慢性皮膚疾患のある人に注意が必要だと言われています。

ビブリオ・バルニフィカス感染症から人食いバクテリアを予防するために、特に気をつけてほしいのは肝臓の弱い人や肝硬変(かんこうへん)患者、基礎疾患のある人です。生ではなく加熱したほうが安心です。

赤ちゃんの場合は、生の魚介類を早期から与えないように徹底しましょう。赤ちゃんは消化器官も未発達なので他症状も心配です。

人食いバクテリアの受診

ママ

人食いバクテリアと聞くと怖いイメージがありますが、その言葉だけが先行してしまって、実際の治療までは知らない人が多いようです。

皮膚が黒ずんできてからでは、細胞が壊死しはじめています。発熱や嘔吐、下痢や不快症状があるときは早急に受診してほしいです。発熱しただけでは何が原因なのか、検査をしなければわかりません。勝手な判断で放置することは危険です。

人食いバクテリアは症状が進めば、壊死した部分の切断も余儀なくされます。症状にもよりますが投薬も考えられます。どれも早期発見が治療につながります。

育児中では赤ちゃんを最優先して、ママやパパの体の変化は後回しにしがちです。人食いバクテリアに限ったことではありません。これからはパパとママの体調変化も重要視して生活することをおすすめします。赤ちゃんをしっかり育てるためにも、家族全体で健康面の維持について考えてみましょう。

参考1:産経ニュース
人食いバクテリア」劇症型溶血性レンサ球菌感染症が過去最多

参考2:厚生労働省
ビブリオ・バルニフィカスに関するQ&A

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